2、人間らしく生き働くために
労働基準法を知りましょう
◎はじめに
「労働基準法」は、「労働条件は、労働者が人間らしい生活ができるものでなければならない」という理念を掲げて、就職から退職までのことに関していろいろな条件を定めています。
◎「労働基準法」は最低条件を定めたもの
このさまざまな条件は「この条件を下回って労働者を働かせてはいけない」と定めたものです。例えば「1日8時間労働週40時間労働」という規定はこの条 件を下回るものはダメというものであって、この基準を上回る条件で働くこと「例えば1日7時間週35時間」は大いに結構なことなのです。それを実現するの はみなさん一人ひとりの力が団結してできるのです。
ここに掲げるのは,「労働基準法」で規定されていることについての説明です。労働相談するときの参考にしてください。
1.労働契約について
・労働条件について会社は労働者を採用するときに書面で次の各項について明示しなくてはなりません(労働基準法第15条)
労働契約の期間に関する事項
就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
始業及び就業の時刻、所定労働時間を越える労働(残業)の有無、休憩時間、休日、休暇並びに就業時転換に関する事項。
賃金の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締め切り及び支払いの時期に関する事項。
退職に関する事項。
・合理的な理由なく労働条件を労働者に不利に一方的に変更することはできません(労働契約法第9条)
ただし、いくつかの条件をクリアしたときには就業規則の変更によって労働条件を変更することができるとしています(労働契約法第10条)。
2.就業規則について
・会社は、就業規則は以下のように定めて作らなくてはなりません。
常時10人以上の労働者を使っている会社(事業所)は就業規則をつくり、労働基準監督署に届け出なくてはなりません。
就業規則に必ず書かなくてはいけないのは、労働時間、休憩時間、休日、休暇、賃金、退職に関することです。
就業規則をつくるときには、また就業規則を変更するときは、会社は労働者側の意見を聞いて、労働基準監督署に届け出るときに、その意見を書いた文書をつけなくてはならない(労働基準法第90条第2項)。
「労働者側」というのは、事業場ごとに労働者の過半数が加入している労働組合がある場合には、その労働組合です。労働組合がない場合や過半数が加入している労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する(選挙で選ばれた)代表者です。
・会社は、就業規則や労使協定を常時各作業場の見やすい場所に掲示、備え付ける、書面を労働者に交付、磁器ディスクに記録し、内容を常時確認できる機器を設置することが義務づけられています(労働基準法第106条)
3.解 雇
《以下の掲げるような例の「解雇」は解雇権の濫用であり、不当労働行為です》
・客観的な合理的な理由のない「解雇」は無効です(労働契約法第16条)。《労働契約法は2008年3月1日施行)
・解雇が正当でも、30日前に予告、もしくは30日分の賃金を支払わなくてはなりません。(労働基準法第20条第1項の但し書き)
・労働者の国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇はできません。(労働基準法第3条)・労働者がケガをしたり、病気になって療養するために休んでいる間 と、出勤し始めてからの30日間、女子が産前産後の休暇を取っている間と、その女子が出勤し始めてからの30日間は解雇できません。(労働基準法第19条 第1項)
・整理解雇の4要件を満たしていない解雇も解雇権の濫用とみなされ、違法な不当解雇にあたります。
《整理解雇の4要件とは》
1、整理解雇の必要性=会社の維持、存続をはかるために、整理解雇が必要、かつ最も有効な方法であること。
2、解雇回避の努力=新規採用の中止、希望退職者の募集、一時帰休の実施、関連会社への出向など、会社が解雇回避のために努力したこと。
3、整理基準と人選の合理性=どんな人を整理解雇の対象とするのか基準が合理的かつ公平で、その運用も合理的であること。
4、労働者との協議=解雇の必要性や規模・方法・整理基準などについて十分説明し、労働者の納得を得る努力をしたこと。
・労働者が労働組合を結成したり、加入したことを理由に解雇することも「不当労働行為」として罰せられます。(労働組合法第7条第1項)
4.会社が倒産したとき
・労働者の賃金は「労働債権」として「先取り特権」が認められています(民法303条・341条)。
・会社が倒産して財産がまったくない場合は国が会社に変わって立替払いを行う制度があります(「賃金の支払の確保等に関する法律」)。
・会社(事業主)は、6カ月間継続勤務し、その8割以上勤務した人には、最低10日間の年次有給休暇(年休)を付与しなくてはなりません(労働基準 法第39条第1項、第2項)。これは法律によって生じるので、労働者が請求して始めて生じるのではありません。年休はその年の未消化分は翌年に繰り越しで きます(労働基準法第115条)。
・年休は、それをどのように利用するのかは労働者の自由です。会社は休暇の理由のいかんによって年休を与えたり、与えなかったりすることはできません。
・年休は、労働者がいつでも自由に取ることができます。
・年10日以上年休が付与される労働者に対して、年5日については、使用者が時季を指定して年休を取得させることが義務づけられています。ただし、すでに年5日以上年休を取得している労働者には使用者が時季指定することはできません(労働基準法第39条第7項)。
年次有給休暇付与日数
勤続勤務年数 |
6ヶ月 | 1年 6ヶ月 |
2年 6ヶ月 |
3年 6ヶ月 |
4年 6ヶ月 |
5年 6ヶ月 |
6年 6ヶ月以上 |
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
6.労働時間は週40時間制が原則
・労働時間は、一日8時間以内、週40時間以内です(労働基準法第32条)。
ただし、商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業の中で9人以下の規模の事業所については1週44時間以内の特例が残っています。
規模というのは企業全体ではなく、事業所ごとの規模です。(レストランならその固有の店の規模)
◇変形労働時間制について
労働基準法が「改正」され以下のような週40時間制度の例外が認められるようになりました。
・一カ月単位の変形労働時間制
・一年単位の変形労働時間制
・一週間単位の変形労働時間制
・フレックスタイム制度
これらの制度は、妊産婦についてはフレックスタイム制度をのぞき、請求があれば変形労働時間制は適用されません。満18歳未満の年少者は原則として変形労働時間制によって労働させることはできません。
◇みなし労働時間制について
・事業所外のみなし労働時間制
営業など、事業所外で仕事をする場合、労働時間の算定が困難な業務についてのみ認められています。ただし労使協定を締結して労働基準監督署への届け出が必要です。
・裁量労働制
いくつかの業種に限って認められてきましたが、2000年4月以後、新しく事業運営に関する企画、立案、分析の業務についても裁量労働制が認められました。など、これらの実施については、労使委員会の決議、労働者本人の同意が必要です。
7.残業・休日労働の割増賃金
・会社が労働者に所定労働時間を越えて働かせたり、休日に出勤させるときには、まず「労使協定」を締結して労働基準監督署に届け出なくてはなりません。
・時間外労働の割増賃金は通常の賃金の2割5分以上(1.25倍)です。
・休日労働の割増賃金は通常の賃金の3割5分以上(1.35倍)です。
・深夜労働(午後10時〜午前5時)の割増賃金は通常の賃金の2割5分以上(1.25倍)です。
・深夜残業の割増賃金は通常の賃金の5割以上(1.5倍)です。
・休日深夜残業の割増賃金は通常の賃金の6割以上(1.6倍)です。
・1か月60時間を超える時間外労働は割増率5割以上(1.5倍)です。深夜の時間帯に60時間以上を超える時間外労働は深夜割増2割5分+時間外割増5割=7割5分以上(1.75倍)となります。
◇割増賃金の計算方法
365−(週休日+その他の休日) 一日の所定 1.25~(深夜1.5~)
賃金(月額)÷ × ×
12 労働時間 1.35~(深夜1.6~)
8.各種保険の加入について
◇雇用保険について
・労働者を雇用するすべての事業に適用されます。
求職者給付
働く意志と能力がありながら再就職できない(失業)状態にあり、かつ離職の日以前1年間に被保険者であった期間が通算6カ月以上あり、11日以上働いた月が6ヶ月以上あれば受給資格があります。
雇用保険の適用範囲(H22.4.1改正)・・・31日以上雇用が継続されることが見込まれること。1週間の所定労働時間が20時間であること。
雇用保険の給付日数については問い合わせください。
雇用保険に未加入とされた人の適用範囲(H22.4.1改正)・・・これまでは2年しか遡及(さかのぼる)ことができませんでしたが、雇用保険料を天引きされていたり、給与明細の書類があれば、2年を超えて雇用保険が遡及適用されます。
◇健康保険・厚生年金・労災保険について
これらの保険や年金については会社に加入が義務づけられています。
9.女性労働者の権利(男女雇用機会均等法)
◇1997年、男女雇用機会均等法の改正により、労働者の募集、採用、配置、昇進について、女性であることを理由に男性の差別を禁止しました。女性の定年 を男性より早くしたり、女性が結婚や出産をしたことで退職を強要することなども厳しく禁止されています。また「セクハラ」規制を義務づけています。具体的 には以下のような規定があります。
・募集および採用での差別禁止
・配置、昇進及び教育訓練での差別禁止
・福利厚生での差別禁止
・定年、退職、解雇についての禁止
定年、解雇について男性と差別的あつかいの禁止
結婚、妊娠または出産を理由とする退職制度の禁止
産前産後休業をしたことにを理由とする解雇の禁止
・職場に置けるセクシュアルハラスメントの防止
・妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置
《詳しい措置についてはお問い合わせください》
10.パートやアルバイトなどのみなさんの権利
◇パート、準社員、契約社員、派遣労働者、アルバイトなど、どんな雇用形態でも、「労働基準法」が適用されます。
◇特に使用者は以下の点については適切な措置を講ずることが必要です。
・雇入通知書 使用者は、賃金、就業時間、休日・休暇など労働条件を記載した『雇い入れ通知書』の明示が必要です。
・就業規則 使用者は、10人以上の労働者を使用する場合には、パートタイマーにも適用される就業規則の作成が必要です。
・労働時間、労働日 使用者は、労働時間及び、労働日を定めるにあたっては、短時間雇用労働者の事情を十分考慮し、所定労働時間を超えて、また所定労働日以外に労働させないようにできるだけ努めなければなりません。
・年次有給休暇 パートタイマーにも労働基準法の定めるところによって六カ月以上8割以上働けば年次有給休暇を与えなければなりません。
・雇用保険 31日以上の雇用が見込まれ、1週間の所定労働時間が20時間以上である者は雇用保険の被保険者になります。
・社会保険・厚生年金は、その事業所で働く一般の労働者(正社員)の4分の3以上であれば、パートにも加入義務が発生します。また1週間の所定労働時間が20時間以上、賃金月額8.8万円以上の条件を満たせば短時間労働者も被保険者になります(2024年10月1日から被保険者50人以上の事業所に適用)。
・労働災害 仕事上のケガ、病気は労災適用となります。
・有期労働契約において「くりかえし更新」している場合には、「解雇」の場合と同様、正当な理由と手続きが必要です。
・有期労働契約(パート・アルバイト・契約社員など)で5年を超えて「くりかえし更新」している場合には労働者が使用者に申し込むことによって「期間の定めのない労働契約」に転換できます(「無期転換ルール」)(労働契約法第18条)。
『有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準』が定められました。(2004年1月1日制定・2008年3月1日改正)
@ 使用者は、契約締結時に期間満了後の更新の有無の提示しなくてはならない
「更新する場合がある」ときは、更新しない場合には、その理由を明記すること、更新の有無の判断基準も明記すること
A 使用者は、3回以上更新し、または1年を超えて継続勤務している有期労働契約を更新しない場合には契約期日の30日前までに予告が必要。あらかじめ、更新しない旨明示されているものを除く。
B 使用者は、労働者が更新しない理由について証明書を求められたらすぐに交付しなくてはなりません(Aの場合において)。
C 使用者は、一回以上更新し、雇い入れから一年を超えて働いている場合には、労働者の希望に応じて契約期間をできるだけ長くするよう勤めなくてはならない。
週所定 労働日数 |
1年間の 労働日数 |
6ヶ月 | 1年 6ヶ月 |
2年 6ヶ月 |
3年 6ヶ月 |
4年 6ヶ月 |
5年 6ヶ月 |
6年 6ヶ月以上 |
4日 | 169〜216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
3日 | 121〜168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 | 9日 | 10日 | 11日 |
2日 | 73〜120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
1日 | 48〜72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
なお、週所定労働日数5日以上または週30時間以上の労働者については,事業主(会社)は正規雇用労働者と同じ日数を付与しなくてはなりません。
正規雇用労働者に対する「年次有給休暇付与日数表は、「2.年次有給休暇」の項目を参照してください。